高血圧はさまざまな命に関わる病気を招くリスクを抱えている。「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状がなく進行することもあり厄介だ。高血圧は不規則な生活や食習慣が主な原因だと思われがちだが、実は職場での過重労働によるストレスも見逃せない。AERA 2019年12月23日号では、ストレスと血圧の関係について解説する。
そろそろ家だな、と思ったとき右膝の力が抜け、“膝カックン”されたような感覚がした。
昨年2月13日、3連休明けの朝8時、よく晴れた寒い日だった。出版社に勤める男性(48)は出勤前の犬の散歩中、突然右半身に力が入らなくなった。頭がクラクラし、右手に持っていた犬のリードが手から離れた。
なんとか自宅にたどりつき、妻に犬を預けて近所の内科に向かった。普段は徒歩4分の道のりが、何倍も長く感じた。すぐに診察室に通され、血圧を測ると198mmHg/110mmHg。「脳梗塞の疑いがある」と言われ、救急病院に搬送された。
診断結果は、ラクナ脳梗塞。高血圧により、脳の細い血管が詰まることで起きる。自覚症状がないことも多く、ダメージが蓄積すると認知症になることもある。
ここ数年、健康診断を受けていなかったが、2011年ごろに血圧が高いと言われたことを思い出した。そのときは降圧剤を処方され、1カ月ほど飲み続けた。血圧が下がってそのままにしてしまったが、治療を継続すればよかったのか……。
幸い、男性の脳梗塞は場所がよく、それほど重症ではなかった。入院はせずに生活指導やリハビリのアドバイス、薬を処方されて帰宅した。よく知られるように高血圧は生活習慣病だ。遺伝や体質によるところもあるが、塩分のとりすぎ、肥満、暴飲暴食、運動や睡眠の不足などで引き起こされる。男性はその日から不規則だった食事や生活習慣をガラリと変えた。
ごはんは1食あたり茶碗半分~1杯程度、1日あたり塩分6~8グラム、1600キロカロリーに制限した。酒とたばこもやめた。リハビリのためにとにかく歩き、趣味の電子ドラムを叩いて手を動かした。右手右足の機能は少しずつ回復し、95キロあった体重は2カ月半で87キロにまで落ちた。ただ、血圧だけは一向に下がらず、150~180mmHg/80~90mmHgのままだった。降圧剤を強いものに変えても、効果はなかった。
ところが今年の4月以降、血圧が下がりはじめ、110~120mmHg/60~89mmHg程度で安定するようになった。実はその頃はハードな食事制限に疲れてしまい、普通に食事をするようになり、酒もたばこも再開していた。にもかかわらず、血圧が下がっていたのだ。
考えられるのは仕事の変化だ。3月までは専門誌の編集長として部署の数字に追われていた。脳梗塞を発症した日は数日後に予算会議を控えており、売り上げも広告収入も厳しいなかで予算をどう通すか悩んでいた。それが4月からは現場を離れ、追い立てられるような感覚がなくなった。
ストレスは血圧と深く関係している。ストレスを受けると心臓の拍動が増え、血管が細く狭くなり血圧が上昇する。さらに脳の視床下部・下垂体がコルチゾールというホルモンを出すように副腎に指令を出す。コルチゾールはストレスホルモンと呼ばれ、血圧を上昇させる作用がある。人形町メンタルクリニック院長の勝久寿医師はこう話す。
「高血圧は症状がないため、自覚のない人が多いが、患者さんの血圧を測ってみたら高かったことはよくあります」
とくに過重労働の管理職男性に多く、薬を飲んで生活改善をしても血圧が下がらない人が多いという。真面目で責任感が強く、コントロール欲求が強い人は仕事を抱え込みやすく、ストレスをためやすい。
男性も効率化のために、あらゆる案件を「ワンストップ」で集約していた。分業ができない体制になり、仕事を抱え込むようになっていた。ただ、医師から「仕事のストレスではないか」と指摘されても、「そんなはずはない」と思っていた。企画や誌面を考える仕事は楽しいし、やりがいも大きかったからだ。しかし、本人は自覚せずとも、体は悲鳴を上げていたのだ。
「高血圧などの生活習慣病とメンタル不調は、同じ根っこを共有するきょうだいのようなもの。不調が体に出る人もいれば脳に出る人もいます」(勝医師)
現在、男性はオブザーバー的な立場だ。各部署から上がってくる問題はリスク管理のためにすべて共有され、解決策は合議制で決められる。一人で抱え込むことはまずない。
先月、降圧剤を弱いものに変えた。医師からは「次の目標は、降圧剤をやめられるようになること」と言われている。
https://dot.asahi.com/aera/2019121800070.html?page=1
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Source: ダイエット速報@2ちゃんねる
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