ホオジロザメのDNAの解読に何年も苦労して挑んできた科学者によると、実際に人類が学ぶべきことは多いようだ。
米国の研究チームが初めてホオジロザメのゲノムのマッピングに成功し、このほど発行された米国科学アカデミー紀要で報告したのである。
この科学的成果は、個体数が激減するホオジロザメをはじめとするサメ類の個体群動態(個体数や生物量、密度)について理解を深めようとする保全生物学者に、重要な情報をもたらした。
まず、人間には23対ある染色体が、ホオジロザメには41対あることが判明した。
大規模なこのゲノムは、太古の生物が長期間に渡りどのようにして地球の海を支配してきたかを知る手がかりとなる。
この手がかりはいつの日か、進化可能なわれわれの種があまり病気にかかることなく長生きするうえで役立つかもしれない(もちろん、われわれが先に地球を消滅させなければの話だ)。
「サメのゲノムを解析する資金を得るのは、かなり厳しい状況です」と、コーネル大学の進化生物学者であるマイケル・スタンホープは言う。
彼は友人のマフムード・シヴジと、今回のゲノム・マッピング・プロジェクトを率いている。
シヴジはノヴァ・サウスイースタン大学ガイ・ハーヴィー研究所の保全生物学者だ。
(中略)
■ “HPを全回復”できる能力をもつ?
そのひとつに、サメの優れた治癒能力に関する研究がある。
例えば、噛まれたり傷ついたりして深刻な外傷を負ったサメが、数カ月後には完治したという話が何十年もの間、漁師や海洋生物学者たちの間で語り継がれてきた。
ツマグロという種類のサメに関する最新の研究では、数週間、ときにたった数日で傷を治せるほどの著しい回復力があることが判明している。
ホオジロザメの新しいゲノム地図は、ゲームでいう「HP全回復」の赤い薬のような能力を、いかに獲得したかを明らかにしている。
世界の危険な海で何百万年という生存競争を繰り広げてきた結果、遺伝子は微調整されていった。
そして、強力な血液凝固因子をコードするDNA配列や、新しい肉体の基礎的要素となる足場タンパク質など、傷を治すいくつかの重要なプロセスに影響を与えたのだ。
ホオジロザメは独自に順応した遺伝子をもっており、その数はほかのどの脊椎動物よりも多いようだ。
「ホオジロザメのほとんどのゲノムは傷の治癒のためにあります」と、スタンホープは言う。
それは、ホオジロザメが食物連鎖の頂点に君臨するようになったのが、長い進化の歴史におけるごく最近の出来事であることを示唆している。
天敵のいないホオジロザメの寿命は、一般的に75年程度とされる。
巨大なサイズと長い寿命から数学的に考えれば、どちらも突然変異につながりやすいこともあって、がんを発症しやすくなるはずだ。
一方で研究者たちは、象やクジラといった長寿で体の大きな種のがんの発症率が、人間とさして変わらないことを以前にも増して認識している。
生物学者は、これを「ピートのパラドックス」と呼ぶ。ゲノム解析の結果を研究したところによると、この抗がん性という優れた能力は、遺伝情報の完全性を保護するゲノム安定性をもつ遺伝子集団に由来するようだ。
スタンホープとシヴジによる新しいゲノム地図からは、ゲノム安定性に基づく傷の修復メカニズムや腫瘍の抑制につながる遺伝子コードを、ホオジロザメが大量にもっていることが明らかになった。
はるか昔に進化を遂げ、生命の樹において人間と遠く離れた種であるがゆえに、サメの遺伝子はまったく新しい抗がん作用を示すかもしれない。
野生のサメのがんの発症率には不明な点が多いことから、研究者らはこの仮説をラボで検証する。
ゲノム安定性をもつサメの遺伝子をマウスに移植して発がん性物質にさらすことで、サメのDNAがもつ“防御力”を測定する計画だ。
「これらの生物の遺伝子によって、がんはどれだけ抑制されているのか。その可能性を理解することで、人間に大きな恩恵がもたらされるかもしれません」と、スタンホープは言う。
※記事を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい。
WIRED.jp 2019年5月21日 17時0分
http://news.livedoor.com/article/detail/16493377/
続きを読む
Source: ダイエット速報@2ちゃんねる
コメント