全身麻酔なしで手術を受けるというのは、考えられない話です。
しかし、この「全身麻酔がなぜ人の意識を奪うのか」という詳しい原理については、医学はこれまで説明することができませんでした。
麻酔の原理がよくわかっていないという話は、ちょくちょく耳にしている人もいるかもしれません。
けれど、こうした医学ミステリーの古株も、とうとう最新技術を用いた研究を前に陥落したようです。
新しい研究によると、細胞膜内にある本来なら秩序だった脂質クラスターが、クロロホルムにさらされると短時間で無秩序になるということが原因とのこと。
最新の超解像度光学顕微鏡と、ショウジョウバエを使った実験で明らかにされました。
175年に渡る医学界のミステリー
西洋で初めて全身麻酔による手術が行われたのは、1846年のことでした。
ボストンのマサチューセッツ総合病院で行われた腫瘍患者の手術は「エーテルドーム」と呼ばれていて、ここで全身麻酔の効果が初めて実証されたのです。
この様子は、絵画にも描かれている歴史的な重要イベントでした。
実に175年も前から全身麻酔は利用されているわけですが、麻酔によって人が意識を失うメカニズムは、これまで不明のままでした。
未解明と言われると、まったく何もわかっていないようなイメージを受けてしまいますが、科学の世界で未解明の問題といった場合、おおよその検討はついているけれど、事実と認める証拠が足りないという状況がほとんどです。
「あの人が犯人に違いない、でも証拠が足りない」とコナンくんが言っているような状態ですね。
全身麻酔の原理については、1899年にドイツの薬理学者ハンスと、1901年にイギリスの生物学者チャールズが、脂質の溶解度が麻酔の効力を決定しているようだ、という研究を発表しています。
これはかなり賢明な結論で、今回の研究でも、細胞膜内で神経活性化などに関係している「脂質ラフト」という部分に着目しています。
これまで1世紀近くに渡って、医学研究者たちが細胞内の脂質になにかあるようだ、と考えながらも麻酔の効果との関係を決定できなかったのには、2つの要因があります。
1つは、目的の脂質の変化が小さすぎて見えなかったこと。もう1つは、多種多様な脂質の組織が複雑で、その機能が完全にわかっていなかったことです。
新たな研究は、この2つをクリアすることができたのです。
原因は脂質の無秩序化
問題を解く鍵の1つは、非常に小さい世界を見る新しい顕微鏡技術の登場です。
ノーベル賞も受賞した最新の顕微鏡技術を使った「STORM顕微鏡(確率的光学再構築顕微鏡)」は、普通なら見ることのできない光の波長より小さい分子などを観察できる超解像度顕微鏡です。
また、脂質の複雑な組織や機能についても、最近は多くの知見が集まっていて、研究を進めやすい状況になっていました。
今回の研究チームは、こうした技術と知見を用いて、細胞をクロロホルムに浸して観察を行いました。
するとGM1と呼ばれる細胞膜脂質クラスターが大きく広がったのです。
これは細胞内の秩序だった脂質ラフトが無秩序に変わっていくものでした。
この組織の変化を注目して見ていったところ、無秩序になるにつれてGM1は、内容物の酵素PLDを周りに放ちはじめました。
これは、まるでビリヤードの玉のように別の脂質クラスターへと弾かれていき、ニューロンの発火能力を抑える働きのあるクラスターを活性化させたということです。
研究チームは、この細胞の変化を生きた動物の中で確認するため、ショウジョウバエを使って実験を行うことにしました。
研究チームが試したのは、この脂質から出される酵素PLDの削除でした。すると、ショウジョウバエは麻酔の鎮静効果に耐性を得るようになったのです。
酵素PLDを削除したショウジョウバエは、通常通り効果を出すためには、麻酔薬が2倍必要になったのです。
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Source: ダイエット速報@2ちゃんねる
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